事業者向け:介護事業の指定要件
介護保険サービスを提供して介護報酬を受け取るには、都道府県知事(地域密着型サービス等は市区町村長)から「指定」を受ける必要があります。
指定を受けるための4つの要件
① 法人格
株式会社、合同会社、NPO法人、社会福祉法人、医療法人などの法人であること。個人事業主は原則として指定を受けられません(病院・診療所が行う一部サービスなどの例外あり)。定款の事業目的に、行う介護サービスを記載します。
② 人員基準
サービスごとに、管理者・専門職・介護職員などの資格と配置人数(常勤換算)が定められています。
③ 設備基準
事務室、相談室、訓練室、居室などの広さ・設備、消防法・建築基準法への適合が求められます。
④ 運営基準
契約・重要事項説明、記録の整備、苦情対応、事故対応、秘密保持、感染症対策、業務継続計画(BCP)、虐待防止などのルールを守る体制。
このほか、申請者や役員が介護保険法上の欠格事由(禁錮以上の刑、指定取消から5年未満など)に該当しないことが必要です。
指定権者(申請先)
| 区分 | 主なサービス | 申請先 |
|---|---|---|
| 居宅サービス・介護保険施設 | 訪問介護、訪問看護、通所介護(定員19人以上)、短期入所、福祉用具貸与、特定施設、老健、介護医療院など | 都道府県(政令市・中核市は市) |
| 地域密着型サービス | 地域密着型通所介護(定員18人以下)、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、小規模多機能、定期巡回・随時対応型、地域密着型特養(定員29人以下)など | 市区町村 |
| 居宅介護支援 | ケアマネジャーによるケアプラン作成 | 市区町村 |
| 介護予防支援 | 要支援者のケアプラン作成 | 市区町村(地域包括支援センターのほか、2024年度から居宅介護支援事業所も指定対象) |
| 総合事業(第1号事業) | 訪問型・通所型サービス(要支援者等) | 市区町村 |
地域密着型サービスは、原則として事業所がある市区町村の住民だけが利用できます。また、市区町村の介護保険事業計画により公募制・総量規制がある場合があります。
主なサービスの基準(概要)
以下は国の基準の概要です。実際の基準は都道府県・市区町村の条例で定められ、上乗せ基準がある場合もあります。必ず指定権者の手引きを確認してください。
訪問介護
| 管理者 | 常勤・専従1名(管理業務に支障がなければ同一事業所の他職務と兼務可)。資格要件なし |
|---|---|
| サービス提供責任者 | 利用者40人ごとに1名以上(常勤)。介護福祉士、実務者研修修了者など |
| 訪問介護員 | 常勤換算2.5人以上(サービス提供責任者を含む)。介護福祉士、実務者研修、初任者研修修了者など |
| 設備 | 事業運営に必要な広さの専用区画(事務室)、相談スペース、手指洗浄設備など |
通所介護(デイサービス)
| 管理者 | 常勤・専従1名(兼務可の場合あり) |
|---|---|
| 生活相談員 | 提供時間に応じて専従1名以上(社会福祉士、精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格など。自治体により介護福祉士・介護支援専門員等も可) |
| 看護職員 | 1名以上(定員10人以下の場合は不要な扱いあり。病院等との連携による配置の特例あり) |
| 介護職員 | 利用者15人までは1名以上、15人を超える場合は5人ごとに1名を追加(提供時間帯に応じて) |
| 機能訓練指導員 | 1名以上(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、一定の経験を有するはり師・きゅう師) |
| 設備 | 食堂および機能訓練室の合計面積が「3㎡×利用定員」以上、静養室、相談室、事務室、消火設備など |
居宅介護支援(ケアマネ事業所)
| 管理者 | 常勤の主任介護支援専門員(一定の経過措置・例外あり) |
|---|---|
| 介護支援専門員 | 常勤1名以上。利用者44人ごとに1名を基準(ケアプランデータ連携システムの活用と事務職員の配置で49人) |
| 設備 | 事務室、相談スペース(プライバシーに配慮) |
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
| 規模 | 1ユニット5〜9人、1事業所あたり最大3ユニット |
|---|---|
| 管理者 | 常勤・専従。認知症介護の経験3年以上+認知症対応型サービス事業管理者研修の修了 |
| 計画作成担当者 | 事業所ごとに1名以上(認知症介護実践者研修修了)。うち1名以上は介護支援専門員 |
| 介護従業者 | 日中は利用者3人に1名以上(常勤換算)、夜間は原則ユニットごとに1名以上の夜勤 |
| 設備 | 居室は原則個室で7.43㎡(約4.5畳)以上、居間・食堂・台所・浴室、消防設備(スプリンクラー等)。住宅地など家族や地域住民との交流が可能な場所 |
サービス付き高齢者向け住宅(参考:介護保険の指定ではなく登録制度)
| 根拠 | 高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)。都道府県・政令市・中核市に登録 |
|---|---|
| 住戸 | 床面積原則25㎡以上(共用の居間・食堂・台所等が十分な場合は18㎡以上)、台所・水洗便所・収納・洗面・浴室(共用設備で代替可の場合あり)、バリアフリー構造 |
| サービス | 安否確認・生活相談サービスの提供が必須(日中はケアの専門家が常駐するなど) |
| 契約 | 書面契約、権利金等の受領禁止、前払金の保全措置など |
併設で訪問介護・通所介護などを行う場合は、それぞれ別に指定申請が必要です。
開業までの一般的な流れ
- 事業計画・市場調査
地域の需要、競合、介護保険事業計画(公募・総量規制の有無)を確認。資金計画を立てます(介護報酬の入金は提供月の約2か月後)。 - 法人設立
定款の目的に介護サービスを記載して登記。 - 指定権者への事前相談
物件契約・工事の前に相談するのが原則。自治体によっては事前協議が必須です。 - 物件の確保・改修
設備基準・消防法・建築基準法(用途変更など)・都市計画を確認。 - 人員の確保
資格証の写し、勤務形態一覧表の準備。 - 指定申請
多くの自治体で指定予定日の前々月末〜前月中旬ごろまでに申請。電子申請・届出システムを利用できる自治体も増えています。 - 審査・実地確認
書類審査、現地確認、必要に応じて補正。 - 指定・事業開始
指定は原則として毎月1日付。国保連への請求準備、運営規程・重要事項説明書・契約書の整備。
開業後の主な義務
- 指定の更新:指定の有効期間は6年。更新申請が必要です。
- 変更届・加算の届出:管理者・所在地・定員などの変更、加算の算定開始時などに届出。
- 業務継続計画(BCP):感染症と自然災害のBCP策定、研修・訓練の実施(未策定の場合は減算)。
- 高齢者虐待防止:委員会の開催、指針の整備、研修、担当者の設置(未実施の場合は減算)。
- 感染症対策:委員会、指針、研修・訓練。
- 身体拘束の適正化:施設・居住系サービスでは委員会・指針・研修が必要(2024年度から訪問・通所系でも緊急やむを得ない場合の記録等が義務)。
- 処遇改善:介護職員等処遇改善加算(2024年6月に一本化)の計画書・実績報告。
- 情報公表:介護サービス情報公表制度にもとづく年1回の報告(一定規模以上)。財務状況の報告(経営情報の報告)も求められます。
- 運営指導・監査:指定権者による定期的な運営指導に対応できるよう記録を整備。
開業準備チェックリスト
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基準・制度は2024年度介護報酬改定時点の一般的な内容です。実際の申請には、必ず指定権者(都道府県・市区町村)の最新の手引き・条例を確認し、必要に応じて行政書士・社会保険労務士・税理士などの専門家にご相談ください。